婚約指輪の購入を考えている男性は、どんなダイヤモンドが幾らで購入できるのかを、自分の予算と照らし合わせて知る必要があります。
その価格と見た目の評価に最も関わるのが、
ダイヤモンドの大きさとカットの品質です。
特にカットの品質は重要で、ジュエリー業界で働くデザイナーたちは、ダイヤモンドを選ぶ際には、最初にカット評価の高いものから探していきます。
カット品質の良し悪しが、ダイヤモンドの輝
きにダイレクトに影響してくる事を熟知して
いるからです。
出来れば、高品質で素晴らしい輝きのダイヤ
モンドを、抑えた価格で購入したいと思いま
すよね。
わたくしは、宝石の権威、米国宝石学協会・GIAの宝石鑑定士であり、ダイヤモンドのエキスパートとして、25年以上にわたり海外バイヤーとして勤めてまいりました。
_____________________
__________________
GIA・米国宝石学協会 宝石鑑定ディプロマ
このブログでは、ダイヤモンドの上手な購入に最も重要なカットグレードについて、そして、カット品質の高いダイヤの選び方について、詳しくお伝えいたします。
ダイヤモンド選びにおいて、カットとは何かを知りたいと考えているのであれば、是非読み進んでみて下さい。
必ず参考になると思います。
1.婚約指輪・ダイヤの選び方で最も重要なのはカット品質!
婚約指輪は、お気に入りのデザインのリング
にダイヤモンドがセットされて購入に至りま
す。
したがってそのダイヤモンドの品質の良し悪しで、価格が大きく変わります。
ダイヤモンドを購入する場合には、予定の店舗からいくつかダイヤモンドを見せてもらい、その中から選ぶ形になります。
その際、「 カットが良いダイヤモンドを見せてください。」
と伝える様にデザイナーはアドバイスしま
す。
何故ならカット品質が良いダイヤモンドは光
り輝くからなのです。
ダイヤモンドは、その大きさが同じであれば、品質が高いほど価格も当然高くなりま
す。
ダイヤモンドの品質とは、
• カラー 無色透明ほど良い
• キズ キズや内包物が少ないほど良い
• カット カットグレードが高いほど良い
をいいますが、この中でもカット品質が、そのダイヤモンドの輝きを左右します。
カラーやキズはダイヤモンドが天然のもので
ある限り、鉱山から掘り起こされた原石の段
階で既にあるもなので、それを変えることは
出来ません。
ただ、ダイヤモンドのカットは、カッティ
ング・クラフトマンと呼ばるカッター職人たちが、ダイヤモンドの原石に58の面を入れて行う加工工程なので、人の手で光り輝く宝石に変えることが可能なのです。
ダイヤモンドの原石とそれにカット面をつける加工
では、なぜカット品質が良いダイヤモンドは
光輝くのでしょうか。
2.最高の品質・トリプルエクセレントカットは異次元の輝き
ダイヤモンドのカットグレードは、そのカッ
トの精度によって主に6段階に分かれており、グレードが高ければ光り輝くダイヤモンドとなり、価格も高くなります。
• 3EXELLENT (トリプルエクセレント )
• EXELLENT ( エクセレント )
• VERY GOOD ( ベリーグッド )
• GOOD ( グッド )
• FAIR ( フェア )
• POOR ( プア )
左端から、トリプルエクセレントカット、
ベリーグッドカット、フェアカット
■ カット品質は3つの要素の総合点
中央宝石研究所発行のダイヤモンド鑑定書
ダイヤモンドの鑑定機関として、日本で最も権威と信頼性があるのが中央宝石研究所であり、その鑑定基準は、GIA・米国宝石学協会の定めた世界基準が元になっているのです。
ちなみに、私はこのGIA・米国宝石学協会の本校の鑑定士課程を卒業しています。
日本の中央宝石研究所が発行する鑑定書が以下になります。
この中でカット品質に関する記述の部分が以下になります。
カットの品質は3つの要素の総合評価によって掲示されます。
1. カット等級
このカット等級は3つの要素の中で、最も重要です。
その算出の仕方を簡単に解説いたします。
ダイヤモンドには、理想プロポーションが定められており、そのプロポーションにカットされていれば、光の反射率を最大に持っていく事が出来るので、光り輝くダイヤモンドになるという考え方です。
これを定めたのもまた、GIA・米国宝石学協会なのです。
• ダイヤモンドの各部位の名称
• 理想カットのダイヤの各部位の数値
これらの数値は、ダイヤモンドの直径を100と見たときの割合パーセントになります。
この数値に当該ダイヤモンドの各部位の数値を当てはめ、入っていればカット等級は最上評価の
□ EXCELLENT
を得ることができ、数値が離れていけば減点されていくので、その等級は
□ VERY GOOD
□ GOOD
□ FAIR
と下がっていきます。
ちなみに上記、当該ダイヤモンドの鑑定書には、このダイヤモンドの各部位の数値が記されており、理想プロポーションの数値に入っていることから、カット等級は
□ EXCELLENT
を得ています。
2. 研磨状態
研磨状態とは、ダイヤモンドをカットしていく際表面に付くカット痕を、仕上げの研磨でどれだけ綺麗にとれているか、その研磨レベルの評価を表しています。
ダイヤモンドに残るカット痕
この評価もまた、カット等級同様にあります。
□ EXCELLENT
□ VERY GOOD
□ GOOD
□ FAIR
ちなみに上記、当該ダイヤモンドの鑑定書には、このダイヤモンドの研磨状態が記されており、
□ EXCELLENT
を得ています。
3. 対称性
対称性とは。ダイヤモンドを上から見た時、そして後側から見た時の、左右対称性を評価するものです。
ダイヤモンドの画像の中心を通るラインを境にして、左右の折り返し画像を解析し、その一致のレベルの高いものから、
□ EXCELLENT 以下
評価をつけていきます。
理想カットのダイヤモンドを上下から見た特の画
ちなみに上記、当該ダイヤモンドの鑑定書には、このダイヤモンドの対称性が記されており、
□ EXCELLENT
を得ています。
■ 3つのエクセレントが揃う理想カット
上記の3つの要素
1.カット等級
2.研磨状態
3.対称性
において、全てがトップの EXCELLENT評価を得るものが稀にあります。
これを、トリプルエクセレント・カットといいます。
トリプルエクセレント・カットは、最高級のカット品質とされ、異次元の輝きをダイヤモンドに与えます。
その理由は、トリプルエクセレントにカット
されたダイヤモンドに入った光は、ほぼ全てが目に跳ね返って来ます。
地球上にある全ての物質の中で、入ってきた光をほぼ100パーセント跳ね返すものは、ダイヤモンドしかありません。
■ トリプルエクセレントにカットされたダイヤモンドでは、入射した光の99.5パーセントが上部より目に跳ね返ってくりる
トリプルエクセレントカット
それに比べて、そうでないレベルにカットされたダイヤモンドでは、入射した光の15%以上が下から抜けて行ってしまい、輝きの弱いダイヤモンドに見えるのです。
■ グッドカット以下の品質にカットされたダイヤモンドでは、入射した光の80パーセント以下しか目に跳ね返ってこない
理想カットに比べて深いカットのダイヤ
理想カットに比べて浅いカットのダイヤ
この様に、入射した光のほとんどを跳ね返す
事が出来る稀な鉱物だからこそ、ダイヤモン
ドは暗い中でもひときわ輝きを放つのです。
この最上級の理想プロポーション・トリプルエクセレントカットは、またの名を『トルコフスキーカット』と呼ばれ、トルコフスキーという数学者によって、実は100年前には既に考え出されていました。
ダイヤモンドの理想カットを考案した、
ガビ・トルコフスキー
ただ当時は理論上だけのものであり、ハンド
メイドでは不可能だったものが、現代におい
てコンピューターの精度を得て、実現出来る
に至ったのです。
現在ダイヤモンドの鑑定機関は、このトリプ
ルエクセレントカットを最上級品質と定め、
その基準から離れて行くに従って、カット品
質も下がっていくという形で鑑定していま
す。
3.高品質のダイヤを抑えた価格で購入する裏ワザ
もし、ジュエリーデザイナーが個人的にダイ
ヤモンドを購入する場合には、素晴らしい輝
きのものを、なるべくリーズナブルな価格で探します。
その際のコスパの良い選び方があります。
ダイヤモンドの価格は、品質を表す3つの要素からなりたっているこては、先にお伝えしました。
• カラー 無色透明ほど良い
• キズ キズや内包物が少ないほど良い
• カット カットグレードが高いほど良い
多くの婚約指輪専門店は、3つの全ての品質が高いダイヤモンド、すなわち価格が高いものを勧めてきますが、全ての品質要素を高くすると当然予算から出てしまいます。
したがって、抑える品質と高い品質を組み合
わせて、予算内で購入出来る最大限の品質の
ダイヤモンドを選んで行きます。
3-1.高いカット品質と中程度のクラリティ品質を組み合わせる
ダイヤモンドの価値は光の輝きと考えるの
で、輝きに最も影響を与える品質要素から優先順位をつけて、ベストの組み合わせを選んで行きます。
そのベストな組み合わせは、カットを高い品
質で、キズ・クラリティを抑えた中間品質のダイヤモンドを探してみるのです。
A) 最優先の品質はやはりカットです。
つまりカットはなるべく高品質のものを選び
ます。
出来れば最上級のトリプルエクセレント、 ま
たはその次のエクセレントカットを選びたい
と考えます。
B) 次に優先する品質は、カラーです。
ダイヤモンドが放つ光のスパークは、無色透
明であれば閃光の強さを感じますが、有色に
なるに従って弱くなって来ます。
カラーは無色透明の Dカラーが最高品質とな
り、アルファベット順に、Eカラー、Fカラ
ー、Gカラー・・・・と色がついてくるに従っ
て、カラー品質も落ちてきます。
もちろんカラー品質もDカラーに越したこ と
はありませんが、EカラーやFカラーでも見た
目はほとんどかわりません。
一方、価格では2万円〜5万円位の違いがでで
きますので、価格を抑えるのであれば Fカラ
ーや、その下のカラー品質でも良いと考えま
す。
C) クラリティ・キズや内包物の品質は優先下位
キズや内包物の品質、すなわちクラリティの
優先順位が下位な理由は、ダイヤモンドの輝
きに対する影響が、カット品質やカラー品質
より小さいからです。
上の画は、ダイヤモンド内に存在する内包物
を顕微鏡を通して見た際の、その大きさを黒
いドットで表しています。
実際に婚約指輪に使われるダイヤモンドの直径は、4mm〜5mm なので、内包物は肉眼ではほとんど見えない位の大きさです。
すなわち、ダイヤモンドの内包物は、その品
質がかなり低いものでない限り、光の輝きに
ほとんど干渉しません。
トップランクのクラリティ品質のダイヤと、中間位のクラリティのダイヤの見た目は、他の品質要素が同じであれば変わりません。
その反面、グレードによる価格の違いは、他
の品質要素に比べて大きいと言えます。
これらから、抑えた価格で高品質に輝くダイ
ヤモンドの選び方としては、
■ カットは、トリプルエクセレント、またはエクセレント
■カラーは、Dカラー 〜 Fカラー
■ クラリティ(キズ)は、中間の品質、VS〜S I クラス
にて、店側からいくつか見せてもらい、その中から予算に合うものを絞りこんでいく。、
このスタイルで選んでいけば、価格に合った
品質の高い希望のダイヤモンドが見つかりま
す。
3-2. 予算25万円の婚約指輪ならダイヤモンドはコレがベスト!
婚約指輪の購入予算の全国平均は、約25万円
と言われています。
この予算で、もしジュエリーデザイナーが、
自分の婚約指輪を購入した場合、どんなダイ
ヤモンドを選ぶでしょうか。
まずはリング本体の価格ですが、シンプルな
デザインのものであれば、約10万円前後みて
おけばよいと思うので、ダイヤモンドにかけ
られる価格は15万円位です。
• 最初にダイヤモンドの大きさですが、大きくなり過ぎると、リングデザインに合わなくなるので、0.25カラット前後で良いのではないでしょうか。
• 次に品質で最も大切なカットですが、当然トリプルエクセレントカットを希望します。
• カラーは上から2番目のグレード、Eカラ
ーを選びます。
• そして最後にキズ・クラリティですが、S Iクラスで充分と考えるので、S I1とS I2の上のランク、S I1を選びます。
これにて選んだダイヤモンドと価格は以下に
なりました。
0.265 ct E カラー
S I1 クラリティ
3EXCELLENT カット
¥ 168.000 ( 一般市場価格 )
ただ価格的に15万円を出ていたので、キズ・クラリティ品質を一つ下げた S I2を見せて欲しいと担当者に伝えたところ、こちらのダイヤモンドを提示されました。
0.258 ct E カラー
S I2 クラリティ
3EXCELLENT カット
¥ 148.000 ( 一般市場価格 )
見た目の輝きも素晴らしいもので、最初の
ダイヤモンドと変わらないので、これに決
めました。
やはりトリプルエクセレントの輝きをキー
プしたままに、2万円価格を抑えたダイヤ
モンドを購入出来たのです。
ダイヤモンドの上手な選び方は、予算内で
良いカットと他の品質要素を組み合わせ
て、最大限光輝く上質なものを見つけ出す
作業なのです。
まとめ
婚約指輪を購入する場合に、そのダイヤモン
ドを選ぶにあたり最も重要なのはカットの品
質です。
その選び方として以下を留意してみて下さ
い。
1. 婚約指輪・ダイヤの選ぶ際にで最も重要なのはカット品質です。
2. ダイヤのカットグレードで最高の品質・トリプルエクセレントカットは異次元の輝きを
放ちます。
3. 高品質のダイヤを抑えた価格で購入する場合の裏ワザとして
• 高いカット品質と中程度のクラリティ品質
を組み合わせる
• 予算25万円の婚約指輪なら、そのダイヤモンドとして選ばれたベストの品質のものは
0.258 ct E カラー
S I2 クラリティ
3EXCELLENT カット
¥ 148.000 ( 一般市場価格 )
いかがでしたでしょうか。
一生に一度の大切な婚約指輪の購入です。
そのダイヤモンドの選び方に迷ったなら、是
非参考にしてみて下さい。
筆者
ヨーアンドマーレ代表
GIA・GG 米国宝石学協会 鑑定士 島田 洋輔