来年位には結婚をと考えている男性は、そろ
そろ婚約指輪をスマートフォンで検索して探
し初めています。
ただ、婚約指輪の購入を考える男性は、全体の約3割くらいだという事を知っていますか。
周りが皆婚約指輪を購入しないのであれば、
自分も少し考えてみようかな、そういう思いになりますよね。
15年前は、婚約指輪の取得率は85%だったの
が、今では35%位と言われています。
どうして日本では、急に婚約指輪が購入され
なくなったのでしょうか。
このプログでは、宝石の権威、米国宝石学協会・GIAの宝石鑑定士であり、25年のキャリアをもつプロのダイヤモンドバイヤーが、長きにわたる経験から、ブライダルリング市場の現状を分析してみた結果を伝えています。
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GIA・米国宝石学協会 宝石鑑定ディプロマ
ダイヤモンドや宝石の動きを見れば、今の日
本の経済状態がハッキリと見えてきます。
是非参考にしてみて下さい。
1.お金持ちの国にダイヤモンドは集まる
ダイヤモンドや宝石などというものは、元来
無くても困らないものであり、装飾品の中で
も最も高価なものです。
したがって、富裕な人であったとしても、海
外旅行や不動産、高級時計や高級外車を購入
したその後、つまり最後に余ったお金が回っ
てくるもの、それが宝石なのです。
この余剰金が多い国や人をお金持ちといいま
す。
古今東西、ダイヤモンドはその国の個人個人
がしっかりとお金を持つ国に集まって来るの
です。
では、初めてダイヤモンドの原石が採掘され、それを最初に集めた富裕な国はどこだったのでしょうか。
英国です。
■ 英国に世界のダイヤモンドが集まる
ダイヤモンドが世界で一番最初に発見されたのは、古代のインドです。
19世紀以前のインドでは、ダイヤモンドは豊富に採掘されていました。
そのインドを植民地とし、あるだけのダイヤモンドをヨーロッパに持ちこんたのが当時の大英帝国・グレートブリテンでした。
当時の大英帝国は、王室を中心に多くの貴族が事業や投資でお金を集め、富裕層と呼ばれ階級が存在しました。
彼らはその経済力をバックに、発展途上国を次々に植民地化しながら、世界の富を大英帝国に集めていた、そんな時代でした。
その名残りで、当時採掘された、多くの有名なダイヤモンドを今でも英国は保有しています。
■ コイヌール
1851年に英国王室所有となった、105.6カラットのダイヤモンド・コイヌール
■ カリナン
1907年に英国王エドワード7世に献上された史上最大のダイヤモンド原石・カリナン3106カラット
また1880年には、英国ロンドンに、ダイヤモンドの採掘・卸売り会社、デビアスが設立されます。
このデビアスは、その後2000年代に至るまで、世界のダイヤモンド市場をコントロールするダイヤ事業者共同体を作り上げていきます。
同時デビアスは、世界から集まるダイヤモンドビジネスの象徴の様なシンジケートとなっていったのです。
■ アメリカ合衆国にダイヤモンドが集まる
その後1900年年代に入り、世界経済の覇権はアメリカ合衆国へと移り変わると共に、世界のダイヤモンドは米国へと集まるようになります。
この頃有名な海洋事故が起こります。
大西洋上でのタイタニック号の沈没です。
映画にもなりましたが、このタイタニック号は、大西洋を渡り大英帝国からアメリカ合衆国へ渡る豪華客船で、多くの富裕貴族が乗船しアメリカ合衆国を目指した途中の沈没事故だったのです。
多くの富裕層が乗船し、大英帝国からアメリカ合衆国へ航行中に、大西洋上で沈没したタイタニック号
当時この船には、多くの貴金属も一緒に積まれていた言われており、富の移動を象徴するような歴史上の話しだとされています。
世界恐慌を経てもなお、アメリカの経済力は不動のものとなって行くと共に、世界中からダイヤモンドが入るようになります。
1950年代以降世界の宝飾ダイヤモンドの40%近くを、アメリカ一国で消費する様になります。
同時に世界的に有名なダイヤモンドも入ってくる様になり、
■ ホープダイヤモンド
1911年に、カルティエからアメリカの実業家マクリーンに売却、その後スミソニア博物館所有のホープダイヤモンド 45.5カラット
■ アルコットダイヤモンド
1959年にアメリカ・ハリーウィンストンが、落札、その後リカットされたアルコットダイヤモンド
この頃、世界のダイヤモンドを集めたアメリカ・ニューヨークに、ユダヤ人が中心となり世界一の取り引き額を誇るダイヤモンド取引所が設立されます。
また世界的権威のGIA・米国宝石学協会やハリーウィンストンなどのジュエラーが台頭してくるのです。
ただ、その後1980年代に入り、バブル景気を背景に、今度は日本の経済力が台頭してくるのです。
■ バブルに乗り日本にダイヤが集まる
日本は1980年代よりバブル景気にはいります。
同時に大量の宝飾用ダイヤモンドが輸入され初め、長らくダイヤモンド消費世界一の座がアメリカ合衆国から日本に移ります。
その頃の日本の宝飾ダイヤモンドの需要は凄まじく、同時、ロンドン、アントワープ、テルアビブ、ニューヨークなど、主要なダイヤモンド取引所に日本のダイヤモンドバイヤーが来ると、持ち込まれたダイヤモンドを全て買って帰るため、他の国のバイヤーには何も残らないと言われたのです。
そう言う意味では、バブルの時代の日本は、
確かに沢山のお金持ちが存在したといえま
す。
当時のダイヤモンドだけの市場で3兆円を超えており、宝飾業界全体の規模としては7兆円と言われていたので、米国を抜いて間違い無く世界第1位の経済力だったのです。
当時、5カラット〜10カラットのダイヤモン
ド、小売価格で1000万円を優に超えるものが
飛ぶように売れていました。
また、億単位のピンクダイヤモンドが一か月月に何十ピースも輸入されていたといわれています。
この様な高額なダイヤを購入していたのは、
昔からの資産家では無く、俄かに現金を手に
した、中小の不動産事業者や小売事業者であ
り、その余剰金の使い道に困った人達が節税
の為に購入していたのです。
また、そう言った中小企業の従業員にも、当
然多額の給与がボーナスとして支払われてい
たので、高給取りの銀行員よりも手取りが良
かった時代でした。
その結果、結婚を控えた男性たちは、挙って
高額なダイヤモンドの婚約指輪を購入してい
ました。
その取得率はほぼ1 0 0%だったのです。
ただそれは長くは続かず、1990年代半ばには終焉を迎えます。
2.バブル以降一度も景気は回復していない!
実体経済という言葉があります。
アベノミクスのおかげで、8年近く景気が良かったといいますが、実体経済はどうだったのてしょうか。
テレビの街頭インタビューに応じたほとんど
の人は、景気が良いという実感がないと答え
ています。
宝石業界から言える事は、バブル以降この30
年近く日本の景気が良くなった事はありませ
ん。
上記のグラフは、1990年からの宝石業界への
お金の流入をシンプルに表しています。
若干の上下動はあるものの、一見して分かる
通り、どんどん減って来て、最盛期の4分の1くらいにまで落ちています。
つまり日本人の個人の収入は確実に減ってお
り、宝石を買う余剰資金などほとんど無いの
が実情です。
ただ、婚約指輪の購入数は、既に市場規模が
半減していた2008年頃までバブル期と同じ位
の 85% を維持しており、その後に急減していきます。
その結果、今では婚約指輪を購入するカップ
ルは、全体の35% 程度と言われています。
では、どうしてバブル崩壊後15年近くも婚約
指輪の取得率が下がらなかったのか、それは
その当時の男性たちが皆、金額を下げても購
入し続けたからです。
ちなみに1990年前後の婚約指輪の平均購入価
格は50万円前後、2006年にて38万円前後、
そして、現在は25万円前後と推移して来てい
ます。
つまり、2006年位までは無理をしてでも婚約
指輪を購入していましたが、その間も給与は
下がり続け、徐々に婚約指輪を購入する余裕
がなくなって行き、買わない男性が増えてい
ったと考えられるのです。
アベノミクスのおかげで、8年近く景気が良かったといいますが、実体経済は悪くなる一方です。
結婚を考えるカップルにとっても、厳しい時
代の中で結婚の準備をしなければなりませ
ん。
結婚後に資金がしっかりと貯まった時点で婚
約指輪を贈るスタイルも、また素晴らしいの
ではないでしょうか。
筆者
ヨーアンドマーレ代表
GIA・GG 米国宝石学協会 鑑定士 島田 洋輔
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